医師の残業が減らない本当の理由——「書類作成」に時間を奪われる構造と、電子カルテを替えずにできること
医師の残業が書類作成に集約されていく構造を、外来・在宅の現場視点で分解。クラーク・テンプレ・置換型AIの限界を正直に確認し、電子カルテを替えずに記録の工程だけを軽くする選択肢を整理します。
本記事について:本記事は現役医師で株式会社ModeNote代表の山本康人が監修しています。診療現場の記録業務を、実際に外来・在宅の現場に立つ医師の視点から整理しました。特定の製品への乗り換えを勧める記事ではなく、まず「なぜ書類で帰れないのか」を構造から捉え直すことを目的としています。
診察そのものは時間どおりに終わったのに、気づけば診療後の入力作業で帰宅が遅くなる——。この感覚に心当たりのある先生は少なくないはずです。患者さんと向き合う時間ではなく、その後の「書く時間」が一日の終わりを押し下げている。本記事では、医師の残業が書類作成に集約されていく構造を分解し、これまでの打ち手の限界を正直に確認したうえで、「今の電子カルテを替えずにできること」を整理します。
なぜ「診察」ではなく「書類作成」で帰れないのか
医師の長時間労働というと外来や手術、当直のイメージが先に立ちますが、多くの先生が「最後に残るのは書類」と口をそろえます。診療は患者さんが帰れば終わりますが、カルテ記載・文書作成・レセプト関連の入力は、診療が終わってからまとめて自分に返ってくるためです。
「診療の密度」と「記録の量」は比例しない
丁寧に問診し、患者さんの言葉を多く引き出すほど、カルテに書き起こすべき情報は増えます。つまり良い診療をするほど記録の負担が増えるという、逆説的な構造があります。特に初診・長時間の面談・複数問題を抱えた高齢患者では、会話の内容とカルテ記載量が跳ね上がります。
「後でまとめて書く」が残業の正体になる
診察中はキーボードに向かうより患者さんの顔を見たい。その結果、記録は診察後や外来終了後に先送りされ、まとめて処理する時間が診療時間外に積み上がります。「診療は定時に終わったのに書類で残る」という体感は、この先送りの構造から生まれます。
2024年の働き方改革が「記録の時間」を可視化した
2024年4月、医師にも時間外労働の上限規制を含む「医師の働き方改革」が本格的に始まりました。診療に従事する勤務医の時間外・休日労働は、原則として年960時間(いわゆるA水準)が上限とされ、地域医療の確保などやむを得ない事情がある医療機関には、都道府県の指定を条件に年1,860時間までの特例水準(地域医療の確保のためのB水準・連携B水準と、集中的な技能修得研修のためのC水準〔臨床・専門研修中の研修医・専攻医が対象のC-1、高度な技能を集中的に修得する医師が対象のC-2〕)が設けられています。
制度が変わっても、書くべきカルテの量そのものが減るわけではありません。むしろ「時間内に、同じ質の記録を、どう収めるか」という新しい課題が現場に降りてきています。上限の中に診療も記録も収めるには、記録にかかる時間そのものを短くする工夫が避けて通れなくなりました。
厚生労働省・文部科学省の委託調査(「平成29年度 過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業 報告書(医療に関する調査)」2018年3月、みずほ情報総研)でも、勤務医が「勤務時間終了後も早く退出できない/始業前に早く出勤する理由」として最も多く挙げたのは「診断書やカルテ等の書類作成」(57.1%、複数回答)でした。次いで「救急や入院患者の緊急対応」(57.0%)、「患者(家族)への説明対応」(51.8%)と続きます。書類作成は、決して些末な付随業務ではなく、残業の主因そのものだということが、この調査からも見て取れます。
書類作成が残業に化ける、3つの典型シーン
負担の出方は診療形態で異なります。自院に近い場面を思い浮かべながら読んでください。
外来:短い診察 × 高い件数で「記録の積み残し」が発生する
一人あたりの診察は数分でも、件数がまとまれば記録は膨大になります。診察の合間に書ききれなかった分が終業後に残り、「患者さんはもういないのにカルテだけ残っている」状態になります。
在宅・訪問診療:記録する「場所と時間」がそもそも無い
移動しながらの診療では、腰を据えてPCに向かう場所自体が確保しにくい。居宅間の移動や施設内の限られた時間では記録を後回しにせざるを得ず、持ち帰り作業に転嫁されやすくなります。
精神科・心療内科:面談の情報量が多く、記録が長文化する
通院精神療法などでは、会話の情報量が多く、記録として整理すべき内容が長文になりがちです。会話の密度がそのまま記録の長さに直結します。
これまでの打ち手と、その「壁」を正直に確認する
書類負担への対策は以前から試みられてきました。それぞれ効果はある一方、現場では次のような壁に突き当たります。ここは誇張せず、限界も含めて整理します。
医師事務作業補助者(クラーク)を置く
記録の代行は有力ですが、人材の確保・教育コストがかかります。診療報酬上の「医師事務作業補助体制加算」は入院患者を対象に、入院初日に限り算定される仕組みであり、入院機能を持たない外来のみの無床クリニックは、算定対象となる入院患者がいないためそもそも対象に含まれません(ベッドを持つ有床診療所は算定可能)。結果として「雇いたくても雇えない」小規模の外来・在宅の現場では、負担が医師本人に戻りがちです。
テンプレート・定型文を整備する
よくある所見を定型化すれば速くはなりますが、患者さんごとの個別性が高いほどテンプレは合いにくく、結局は手直しに時間を取られます。整備・保守そのものにも手間がかかります。
音声入力・AIカルテを「新しい電子カルテごと」導入する
音声から記録を作る仕組みは有効な方向ですが、多くは自社の電子カルテ(EMR)への乗り換えや、別端末・QRコード・コピペといった転記の一手間を前提とします。使い慣れたカルテを替えることは、スタッフ教育・データ移行・運用変更を伴う重い意思決定であり、「記録を速くしたいだけなのに導入のハードルが高い」というジレンマが生まれます。
各手段はそれぞれ現場で価値を発揮しています。ここで挙げた限界は特定の手段を否定するものではなく、「自院の状況でどこに壁があるか」を見極める材料として整理したものです。
「電子カルテを替えない」という第4の選択肢
ここまでの壁を踏まえると、現実的な問いはこう変わります——「電子カルテを替えずに、記録を作る作業だけを軽くできないか?」。
この発想から生まれたのが、私たちが開発したModeNote.Voiceです。今お使いの電子カルテ(Webブラウザ型)はそのままに、その上に重ねて動くブラウザ拡張機能で、診察の会話からカルテの文章の下書きを作成し、いま開いているカルテの入力欄へ直接挿入します。乗り換え不要・コピペ不要で、記録を「書き起こす」作業を「確認して整える」作業に置き換えることを目指しています。
ModeNote.Voice は診察会話からカルテの文章の下書きを作成する補助ツールです。医師が内容を確認・修正したうえで記録します。診断や治療の判断は行いません。
- 診察会話の音声を認識し、医学用語も踏まえてカルテの文章に整理します(記載・転記の下書き支援)。
- 今の電子カルテに重ねて使うため、EMRの乗り換え・データ移行は不要です。
- 診察後、入力欄への反映は平均3.71秒でした(※β版試用時データ n=282。実際の診療内容・通信環境等により変動)。
置換型(電子カルテごと入れ替える)との一番の違いは、「引き算」ではなく「重ねる」設計にある点です。今の運用・画面・スタッフの慣れを崩さずに、記録を作る工程だけを支援します。
対応する電子カルテ・画面・通信環境により挙動は異なり、すべての環境での動作を保証するものではありません。
導入前に、先生が確認しておきたいこと(FAQ)
Q. 今の電子カルテを替える必要はありますか?
いいえ。ブラウザ型の電子カルテに重ねて使う設計のため、乗り換えやデータ移行は不要です。対応可否はご利用中の電子カルテ・環境によって異なります。
Q. AIが勝手にカルテを完成させてしまうのでは?
いいえ。作成されるのは下書きです。最終的な記録は、医師が内容を確認・修正したうえで行う前提です。責任の所在は従来どおり医師にあります。
Q. 診断や病名の判断をしてくれますか?
いいえ。ModeNote.Voice は診断・病名の判定を行うものではありません。診察会話をカルテの文章として整理する、文書作成の支援に用途を限定しています。
Q. まず試せますか?
無料体験をご用意しています(クレジットカード登録不要)。まずは短時間のデモで、会話から下書きが作られる流れをご確認いただけます。
まとめ:記録を「書く」から「確認して整える」へ
医師の残業が減らない背景には、「良い診療ほど記録が増える」「後でまとめて書く」という構造があり、働き方改革はその時間を可視化しました。クラーク・テンプレ・置換型AIにはそれぞれ壁があり、特に小規模な外来・在宅では負担が医師本人に戻りがちです。
だからこそ、今の電子カルテを替えずに、記録を作る工程だけを軽くするという選択肢に価値があります。書く作業を、確認して整える作業へ。患者さんと向き合う時間を少しでも取り戻すために、まずは自院の「どこに壁があるか」を見極めることから始めてみてください。
今の電子カルテを替えずに、記録の下書き作成を試してみませんか?
- 仕組みと対応環境を詳しく知る → ModeNote.Voice の詳細
- 45秒で動きを見る → 45秒のデモを見る
- 実際に試す → 無料体験を申し込む(クレジットカード登録不要)
生成されるのは下書きです。内容は医師が確認・修正したうえで記録します。
本記事は診療現場の記録業務に関する一般的な情報提供であり、特定の医療行為・製品の効果を保証するものではありません。
監修: 山本康人