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カルテ記載にかかる時間は何で決まるのか——対策を検討する前に切り分けたい4つの要因

「同じ診療科で、同じくらいの患者数を診ているはずなのに、カルテ記載にかかる時間が日によって、あるいは医師によって大きく違う」——そう感じたことがある院長・勤務医の先生は少なくないはずです。

「同じ診療科で、同じくらいの患者数を診ているはずなのに、カルテ記載にかかる時間が日によって、あるいは医師によって大きく違う」——そう感じたことがある院長・勤務医の先生は少なくないはずです。

結論から言うと、カルテ記載にかかる時間は単一の原因で決まるものではありません。入力方式・テンプレートの設計・記載すべき情報量・診療中の中断頻度という、性質の異なる複数の要因が重なり合って所要時間を形づくっています。したがって「時短のために何かを導入する」という判断の前に、まず自分の診療でどの要因が支配的なのかを切り分けることが、遠回りを避ける最初の一歩になります。

本記事では、この4つの要因を順に整理し、最後に自分のケースでどこがボトルネックになっているかを見極める視点をご紹介します。

なぜ同じ診療科・同じ患者数でも記載時間にばらつきが出るのか

「音声入力を導入すれば時短になる」「テンプレートを整備すれば速くなる」——記載時間の悩みに対して、こうした単一原因・単一解決策の語られ方をよく見かけます。しかし実際には、同じ診療科・同じ患者数であっても記載時間には個人差・日差が大きく出ます。これは、記載時間が次のような複数のレイヤーの掛け算で決まっているためだと考えられます。

  • 入力方式: キーボード入力か、定型文呼び出しか、音声入力かによって、同じ内容を記載するのに必要な動作の数が変わる
  • テンプレート・定型文の設計精度: 自分の診療パターンに合ったテンプレートが用意されているか、都度手直しが必要になるか
  • 記載すべき情報量・記載水準: 診療内容や算定要件によって、そもそも書くべき分量そのものが変わる
  • 診療中の中断・マルチタスクの頻度: 患者対応と記載を同時並行で進める必要がある場面がどれだけ多いか

この4つは互いに独立していません。たとえばテンプレートの設計が甘ければ、どの入力方式を使っても手直しの時間が増えますし、中断が多い診療スタイルでは、せっかく速い入力方式を選んでも効果が実感しにくくなります。ここから先は、この4つの要因をひとつずつ見ていきます。

入力方式が生む時間差

記載時間を考えるとき、最初に意識されやすいのが入力方式です。大きく分けると次の3つがあります。

**キーボード入力(フリーテキスト)**は、表現の自由度が最も高い一方、文章を組み立てながら打つという作業そのものに時間がかかります。特に所見や経過を丁寧に書こうとするほど、文章化の負荷が記載時間に直結します。

定型文・テンプレート呼び出しは、あらかじめ用意した文言をベースに一部を書き換える方式です。定型的な診療パターンでは高速に記載できますが、患者ごとの個別性が高い内容になるほど、テンプレートからの修正量が増え、かえって手間が増えることもあります。

音声入力は、話す速度で情報を残せるという特性があります。ただし、話した内容がそのままカルテの文章になるわけではなく、診察の会話から必要な情報を整理してカルテ文章の下書きを作る、という工程が入力方式としての性質を左右します。この工程が診察後に別作業として発生するのか、診察の流れの中で完結するのかによって、体感する時間の負荷は大きく変わります。

いずれの入力方式にも一長一短があり、「どれか一つが常に速い」というものではありません。診療内容の個別性が高い診療科ほど、テンプレートだけでは対応しきれず、結果として入力方式の選択がより大きく効いてくる傾向があります。この入力方式の負荷が積み重なった先にあるのが、医師の残業が減らない本当の理由で扱った、診療後に持ち越される書類作業の問題です。

テンプレート・定型文の設計精度が記載スピードを左右する

入力方式と並んで見落とされがちなのが、テンプレート・定型文そのものの設計精度です。同じ「定型文を使っている」クリニックでも、記載時間には差が出ます。その差を生む主な要因は次の3点です。

  1. 自分の診療パターンとの一致度: 頻出する症状・処方パターンに合わせて定型文が用意されているか。合っていなければ、呼び出した後の書き換え量が増えます。
  2. 粒度の設計: 定型文が大きすぎると不要な部分の削除が発生し、小さすぎると組み合わせの手間が発生します。ちょうど良い粒度は診療科・診療スタイルによって異なります。
  3. 更新・メンテナンスの頻度: 診療ガイドラインや自院の診療方針が変わっても定型文が古いままだと、都度の手直しが常態化します。

テンプレートの設計は一度作って終わりではなく、実際の記載パターンとのズレを定期的に見直す運用が伴って初めて時短効果を発揮します。逆に言えば、「定型文はあるのに記載が速くならない」と感じている場合、テンプレートの有無ではなく設計精度の問題である可能性を疑う価値があります。

記載すべき情報量・記載水準が所要時間の下限を決める

入力方式やテンプレートをどれだけ最適化しても、記載時間には下限があります。それを決めているのが、そもそも記載しなければならない情報量・記載水準です。

診療録には、診療の経過を正確に残すという本来の目的があります。診療内容や患者の状態によっては、記録として残すべき情報がおのずと多くなる場合があり、そうした診療では、他の要因をどれだけ改善しても書くべき分量そのものが減るわけではないため、記載時間の下限は一定以上に保たれます。

ここで注意したいのは、記載時間を左右する要因として情報量・記載水準を挙げることは、「書く内容を減らせば速くなる」という話とは別だという点です。記録すべき内容を削ることは、診療の質・法的な記録としての妥当性に関わる判断であり、時短の手段として選ぶべきものではありません。この要因について検討できるのは、「同じ内容を、より効率的に整理して記載する仕組みがあるか」という点であって、記載すべき水準そのものを下げることではない、と切り分けて考える必要があります。

診療中の中断とマルチタスクが生む遅れ

4つ目の要因は、診療そのものの進め方に関わるものです。患者と対話しながら同時にカルテを操作する、診察の合間に電話や他のスタッフからの声かけが入る——こうした中断・マルチタスクの頻度が高い診療スタイルほど、記載作業は分断されやすくなります。

作業が分断されると、単に手が止まる時間が発生するだけでなく、再開時に「どこまで書いたか」を思い出すための認知的なコストが加わります。これは入力方式やテンプレートの改善だけでは解消しにくい要因です。特に、一人の患者の診察中に複数回中断が入るような診療スタイル(たとえば移動や往診を伴う診療形態)では、この要因の影響が相対的に大きくなります。記載作業そのものを電子カルテを替えずにどう軽くしていくかという視点は、医師のカルテ残業が終わらない構造と、電子カルテを替えずに減らす道筋でも扱っています。

中断の頻度そのものを完全になくすことは難しくても、「記載作業を診察の流れの中でどこまで完結させられるか」「中断後に再開しやすい形で情報が残せているか」という観点は、対策を考える上でのヒントになります。

自分のケースでどの要因が支配的かを見極める視点と、次に検討すべきこと

ここまで見てきた4つの要因——入力方式、テンプレート・定型文の設計精度、記載すべき情報量・記載水準、診療中の中断とマルチタスク——は、どの診療現場でも同じ配分で効いているわけではありません。次のような問いを自分の診療に当てはめてみると、支配的な要因が見えてきます。

  • 同じ患者数でも、診療内容の個別性が高い日ほど記載時間が伸びる感覚があるなら、入力方式・テンプレートの設計精度が支配的な可能性があります。
  • 定型的な診療でも一定の記載時間がかかっているなら、記載すべき情報量・記載水準が下限を作っている可能性があります。
  • 診察中に何度も中断が入る診療スタイルなら、中断とマルチタスクの影響が大きいかもしれません。

支配的な要因を見極めたうえで、それぞれに合った対策を検討する、という順番が遠回りを避ける近道です。たとえば入力方式が支配的な要因だと感じる場合、検討候補の一つに、診察の会話からカルテ文章の下書きを作成し、既存の電子カルテの入力欄に挿入する形の音声入力ツールがあります。ModeNote.Voiceは、こうした考え方に基づくツールの一つです。録音を止めると、待つほどもなく、いま開いているカルテの入力欄に文章が入るという動き方をします。

ModeNote.Voice は診察会話からカルテの文章の下書きを作成する補助ツールです。医師が内容を確認・修正したうえで記録します。診断や治療の判断は行いません。

いずれにせよ、記載を担うのは医師自身であり、ここで整理した4つの要因はあくまで負担の所在を明らかにするための切り口です。まずは自分の診療でどの要因が大きいかを見極めることから始めてみてください。

今お使いの電子カルテでそのまま使えるかを確認したい方は、製品紹介ページ、または45秒のデモから動きをご確認いただけます。

監修: 山本康人