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カルテ残業はなぜ終わらないのか―電子カルテを替えても解決しない構造

診察はほぼ時間どおりに終わっている。それなのに、気づけば診療後のカルテ記載で帰宅が遅くなっている。そんな感覚を持つ院長・勤務医は少なくないはずです。

診察はほぼ時間どおりに終わっている。それなのに、気づけば診療後のカルテ記載で帰宅が遅くなっている。そんな感覚を持つ院長・勤務医は少なくないはずです。

「今の電子カルテが古いから」「入力機能が使いにくいから」――そう考えて乗り換えを検討したことがある方もいるかもしれません。しかし結論から言うと、カルテ残業の主な原因は電子カルテそのものの機能差ではなく、「診察が終わってからまとめて記録する」というワークフローの構造にあります。この構造が変わらない限り、電子カルテを替えても記載の負担は本質的には解消しません。

本記事では、なぜ乗り換えでは解決しないのかを構造から整理したうえで、電子カルテを替えずに記録工程を見直す第三の道について触れます。

カルテ残業はなぜ「電子カルテを変えても」終わらないのか

多くのクリニック・診療所では、診察中は患者と向き合い、カルテの記載は診察と診察の合間や診療時間終了後にまとめて行う、という運用が一般的です。これは電子カルテのベンダーや機能の違いによらず、ほぼすべての外来診療で共通して見られる構造です。

つまり、記録という作業は「診察の中」ではなく「診察の外」に置かれています。診察件数が多い日ほど、この「外側」に積み上がる記録の量も増え、診療時間内に処理しきれずに時間外へとあふれていく。これがカルテ残業の基本的な発生メカニズムです。

電子カルテを別の製品に乗り換えれば、入力画面のUIやテンプレート機能は変わるかもしれません。しかし「診察後にまとめて記載する」という運用構造自体は、乗り換え先の電子カルテでもそのまま引き継がれます。構造が変わらない以上、記載作業が診療時間外にはみ出しやすいという傾向も、根本的には変わりません。

医師の時間外労働に占める書類作成・記録業務の負担

医師の時間外労働の内訳として、カルテ記載を含む書類作成業務が大きな割合を占めているとしばしば言われます。具体的な比率は調査主体や対象診療科によって幅があるため、本記事では特定の数値には触れませんが、「診察外の書類作成が時間外労働の要因のひとつである」という感覚は、現場で共有されている方も多いのではないでしょうか。

この論点をより詳しく整理した記事として、医師の残業が減らない本当の理由もあわせてご覧ください。診察後の入力作業がなぜ一日の終わりを押し下げるのか、働き方改革の文脈も含めて掘り下げています。

いずれにせよ、書類作成・記録業務が時間外労働の一因として無視できない位置にあるとすれば、対策の焦点は「診察の質やスピード」よりも、「記録がいつ・どこで行われているか」という運用の設計そのものに向ける必要があります。

医師事務作業補助者(クラーク)という制度の届かない範囲

記録負担の軽減策としてまず名前が挙がるのが、医師事務作業補助者、いわゆる「クラーク」の配置です。医師に代わってカルテ入力や書類作成を代行する人員を置くという発想は自然であり、実際に効果を上げている医療機関もあります。

ただし、この人員配置を後押しする診療報酬上の加算制度は、主に入院医療を担う病院を対象とした設計になっているとされ、無床のクリニックや診療所では対象になりにくい、あるいは対象外となる場合があると言われています。制度の詳細や対象要件は改定のたびに変わりうるため、自院が該当するかどうかは最新の算定要件を確認する必要がありますが、少なくとも「クラークを配置すれば解決する」という選択肢が、無床クリニックにとっては制度的に取りにくい場合があるという点は、押さえておく価値があります。

つまり、多くの無床クリニックにとって、記録負担への対策は「人を増やす」以外の道を探す必要がある、というのが実情に近いのではないでしょうか。

電子カルテの乗り換えという選択肢が抱えるコストと限界

もう一つの選択肢として考えられるのが、より入力しやすいとされる電子カルテへの乗り換えです。しかし、乗り換えには相応のコストと限界が伴います。

まず、既存データの移行作業や新システムへの習熟期間が必要になります。スタッフ全員が新しい操作体系に慣れるまでの間は、むしろ一時的に記載効率が落ちることも考えられます。契約や運用体制の見直しにも時間と労力がかかります。

そして何より、乗り換えによって解決できるのは入力画面の使い勝手や機能面の違いであり、「診察が終わってからまとめて記録する」という運用構造そのものは、乗り換え先の電子カルテでも基本的に引き継がれます。第1章で触れたとおり、記録が診察の外側に置かれている限り、電子カルテの種類を変えるだけでは、記載作業が時間外にはみ出しやすいという傾向を根本から変えることは難しいというのが、構造面から見た限界です。

記録工程を「診察の外」から「診察の中」に近づけるという第三の道

ここまで見てきたように、カルテ残業の原因は「診察と記録が時間的に分離している」という構造にあり、クラーク配置には制度的に届きにくい領域があり、電子カルテの乗り換えも構造そのものは変えられません。

そこで考えられるのが、電子カルテを替えるのでも、人を増やすのでもなく、記録という工程を診察の中に近づけるというアプローチです。診察中の会話を記録し、その内容をもとにカルテ文章の下書きを作成できれば、診察が終わった時点で「白紙から記憶を思い出して書き起こす」作業を減らし、記録の起点を診察そのものに近づけるという考え方です。

ModeNote.Voiceは、この考え方に基づくブラウザ拡張です。既存のクラウド型電子カルテはそのまま使い続けながら、Chrome拡張として重ねて動作し、診察中の会話から作成した文章の下書きを、今開いているカルテの入力欄に直接挿入します。乗り換えも、QRコードやコピー&ペーストによる転記作業も必要ありません。録音を止めると、待つほどもなく、平均3.71秒(※β版試用時データ n=282。実際の診療内容・通信環境等により変動)で、いま開いているカルテの入力欄に文章が入ります。

ModeNote.Voice は診察会話からカルテの文章の下書きを作成する補助ツールです。医師が内容を確認・修正したうえで記録します。診断や治療の判断は行いません。

まとめと次の一歩

カルテ残業の根本原因は、診察と記録が時間的に切り離されているというワークフロー構造にあり、電子カルテを乗り換えるだけではこの構造は変わりません。クラーク配置も制度的に届きにくい領域があり、万能な解決策とは言えないのが実情です。

電子カルテそのものは今のまま、記録という工程だけを診察に近づける――そうした選択肢があることを知っておくことは、乗り換えや増員を検討する前の判断材料になるはずです。

対応カルテや仕組みの詳細は製品ページ(/voice)、実際の動きを短時間で確認したい方は45秒デモ(/demo)からご覧ください。

監修: 山本康人